| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-121

シロイヌナズナエコタイプ間の成長速度と高二酸化炭素濃度への応答の比較

*尾崎洋史(東北大・生命科学), 小口理一(The Australian National University) , 彦坂幸毅(東北大・生命科学)

二酸化炭素濃度の上昇は植物によって異なる影響を与える。何がこの違いをもたらすのかを明らかにするために、44のシロイヌナズナのエコタイプを用いて通常大気条件と高二酸化炭素条件(800 ppm)で生育させた。

播種後38日目のバイオマスはエコタイプ間で異なり、いずれの条件でも約2.7倍の差が見られた。また、二酸化炭素濃度の上昇によってバイオマスは1.43から3.16倍に増加し、これはエコタイプごとに二酸化炭素濃度への応答が異なることを示す。播種後25日目と38日目のバイオマスから求めた相対成長速度(RGR)の違いは、主として純同化速度(NAR)に起因し、形態的な表現型である全重量に対する葉面積比と葉重量比、葉重量に対する葉面積比とRGRには有意な相関はなかった。

窒素の観点からRGRを見ると、窒素生産性(NP)は個体窒素濃度(PNC)よりも高い相関を示した。次に、NARでは、葉面積あたりの窒素量(Narea)の方が光合成の窒素利用効率(PNUE)よりも良い相関があった。ここで、植物の大きさによるNARとNareaへの影響を考慮し、RGRとのPNUEとNareaの関係を見てみると、NareaよりもPNUEによってRGRがよく説明され、特に高二酸化炭素条件で顕著だった。

RGRの高二酸化炭素濃度への応答は主にNARとNPの応答によって説明されたが、NAR/Nareaの応答によっても説明された。これは、PNUEの高二酸化炭素濃度への応答はRGRの応答と対応することを示す。

高二酸化炭素濃度に対するRGRの応答はNareaの低いものの方が高い傾向にあった。これは、高二酸化炭素条件下で低いNareaを持つエコタイプはPNUEが高いためと考えられる。


日本生態学会