| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-251

最適配偶をめぐる雌雄の駆け引き-どう産むか、どう護るか?-

*曽我部 篤 (広島大・院・生物圏)

繁殖成功を最大化する配偶パターンは雄と雌でしばしば異なるため、雌雄間には最適配偶をめぐる対立が生じている。卵生産・産卵様式は成熟卵数の増え方や産卵準備期間の長さを規定することで、雌の配偶頻度や産卵量に影響する。一方、雄保護の動物において、雄が保護できる卵数や卵塊数は卵保護様式により制限される。それゆえ雌の卵生産と雄の卵保護は、最適配偶をめぐる性的対立の原因となるかもしれない。本研究では、雄が育児嚢で卵を保護するヨウジウオ科魚類をモデルに、雌の卵生産と産卵、雄の卵保護を介した配偶をめぐる雌雄の対立をシミュレーションにより検証した。モデルでは、卵生産様式については成熟卵数が(1)連続的、(2)段階的、(3)一時に増加する場合を、産卵様式については(1)クラッチ分割できる、(2)できない場合を、雄の卵保護様式については保護できる卵塊数が(1)1つだけ、(2)複数である場合を想定し、計12通りの組み合わせについて、雌雄ぞれぞれの配偶コストを算出した。その結果、雄が1卵塊しか保護できない時には雄の配偶コストが大きくなり、その傾向は雌の産卵量の変異が大きいほど顕著であった。一方、雄が複数卵塊保護でき雌がクラッチ分割できない時には雌の配偶コストが大きくなり、その傾向は産卵量の変異が小さいほど、また、配偶の順番が遅いほど顕著であった。また、雌がクラッチ分割可能で雄が複数卵塊保護できる時には、卵生産様式によらず雌雄共に配偶コストはなくなった。12通りの組み合わせの内、本科魚類で実際に見られるのは、雌雄の配偶コストが共に比較的低くなる組み合わせであった。また雄に一方的に配偶コストのかかる種では、雌に著しい性的形質が発達していることから、配偶をめぐる雌雄の対立が本科魚類の性的二型性進化の一要因であることが示唆された。


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