| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-318

遺伝子組換えセイヨウアブラナの逸出状況に関する経年変化と周年変化について

*西沢 徹,中嶋信美,玉置雅紀,青野光子,久保明弘,佐治 光(国立環境研)

日本はナタネ(セイヨウアブラナBrassica napusの種子)の国内需要のほぼ全てを輸入に依存しており,2009年度の貿易統計によると,カナダ(94%)とオーストラリア(5%)からの輸入がほとんどを占めている。カナダから輸入されるナタネの80%以上は遺伝子組換え(GM)品種と推定される上に,これまで非GM生産国であったオーストラリアでも2008年度から組換え体への転換が始まっており,今後日本に輸入されるナタネに含まれるGMナタネの割合は増加することが見込まれている。国内では既に,輸送中のこぼれ落ちに起因すると考えられるGMセイヨウアブラナの逸出が,ナタネの陸揚げ港や主要輸送道路沿いなどを中心に確認されている。当研究室では2005年度から,国道51号線(R51;茨城県および千葉県)沿いでGMセイヨウアブラナの逸出状況を継続調査しているほか,昨年度からは国道23号線(R23;三重県)沿いを調査区間に加え,年間を通じての生育状況の調査を開始した。今回は,約1年半を経た個体数の周年変化を中心にモニタリングの経過を報告する。

いずれの国道沿いでも,1年を通じてセイヨウアブラナの生育が確認された。冬季でも開花個体や実生個体が確認されたが,生育個体数は年間を通じて一定ではなく,夏期や市民団体による抜き取り活動後に減少した。GMの出現率は調査地間で異なり,R51では約11%,R23では約70%であった。系統ごとの出現頻度も調査地間で異なり,R23沿いでは除草剤グルホシネート耐性系統が多く出現する傾向が認められた。また,R23沿いでは,2種類の除草剤耐性形質を同時に持つ系統も確認された(約2%)。


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