| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-002
熱帯雨林の林冠層の主要な構成要素のひとつであるつる植物の分布様式や分布を制限する要因についてこれまであまり明らかになっていない。本研究では、ボルネオ島低地熱帯雨林の林冠突出木上の着生シダと共生するシダスミシリアゲアリがつる植物の分布を制限するかを検証した。調査はマレーシア領サラワク州に位置するランビルヒルズ国立公園内の林冠観測施設を用いておこなった。
まず長期間の観察によって、突出木の樹冠全体をなわばりとするシダスミシリアゲアリが、なわばり付近の幹上部まで伸長したつる植物の葉や茎を噛み切り、つる植物の樹冠への伸長を防いでいることを確認した。次に、林冠で採取したつる植物の一部をシダスミシリアゲアリのなわばり内となわばり外にそれぞれ設置し、シダスミシリアゲアリのつる排除能力を実験的に確かめた。その結果、設置後1週間での噛み切られた葉数は、なわばり外に設置したつるに比べて、なわばり内に設置したつるで有意に多かった。なわばり内に設置したつるはすべてシダスミシリアゲアリによって噛み切られた。
次に、5樹種の突出木を対象に、シダスミシリアゲアリが共生する着生シダとつる植物の分布の重なりを調べた。その結果、いずれの樹種でも、つる植物が樹冠まで伸長している突出木の割合は、シダが着生している突出木に比べて、シダが着生していない突出木のほうが有意に高かった。シダが着生している突出木の樹冠はいずれもつる植物に覆われていなかった。
これらの結果から、着生シダと共生するシダスミシリアゲアリが突出木上のつる植物の分布を制限することが示唆された。