| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-003

種子寄生者と種子サイズ間に生じる相互作用の地理的変異

*定清奨,石原道博(大阪府大・理)

植物の種子サイズはそれを利用する種子食性昆虫の密度や形質を決める重要な要因であり、結果的に種子自体への食害にも影響する。そのため種子サイズの時間的、空間的な変動は種子食性昆虫との相互作用を変化させると考えられる。本研究では外来性のマメ科植物であるイタチハギとその種子食者であるイタチハギマメゾウムシを用い、種子サイズと体サイズの時間的、空間的な変動パターンとその要因を調べた。

2008年(一部2006年)から2010年にかけて緯度の異なる日本の8カ所から種子を採集し、その重量と食害率、羽化した成虫の体サイズを計測した。種子重量は高緯度に比べて低緯度のほうが大きな年変動を示した。イタチハギマメゾウムシの体サイズは種子重量が重いほど大きかった。種子重量を応答変数とし、温度と降水量、日射量などの非生物要因とイタチハギマメゾウムシの化性(一年の世代数)を説明変数とした線形モデルで解析した結果、種子重量は非生物要因では説明できず、化性のみが影響することがわかった。イタチハギマメゾウムシが多化性の生活環を持つ低緯度ほど種子重量は軽かったが、変動係数は大きかった。化性の増加に伴って種子への食害率が増加すると考えられるため、次に食害率と種子重量の関係を調べた。当年食害率は種子重量とは相関しなかったが、前年食害率が種子重量と負の相関を示した。この結果は、前年の食害率に依存して種子重量が変化することを示している。以上の結果はイタチハギの種子サイズの年変動はイタチハギマメゾウムシの食害を介した相互作用の結果であり、その程度は緯度によって異なることが示唆された。


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