| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-014

土壌栄養塩分布が不均質な環境下で同所的に育成されたホソムギとヘラオオバコに対する地下部植食者の影響

*角田智詞,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命科学)

土壌資源が豊富な場所に、選択的に根を配置する植物は、資源をめぐる競争に有利だと言われている。しかし、集中分布した根は、地下部植食者に摂食されやすい可能性がある。本研究では、仮説「栄養塩が不均質に分布する土壌では、栄養塩への応答性が高い植物が、地下部植食者の影響を受けやすい」を栽培実験により検討した。

地下部植食者(有、無)と土壌栄養塩の空間分布様式(均質、不均質)を2要因とし、2種の植物の個体重を評価した。ホソムギとヘラオオバコを1個体ずつ、6cmの間隔を空けて5号鉢に植栽し、乱塊法に則りガラス温室内に配置した。土壌栄養塩の空間分布が均質な条件では、緩効性無機栄養塩を土壌全体に4g混ぜ込んだ。不均質な条件では、縦方向に十文字に四つ割りした土壌の1/4に3g、残りの3/4に1g混ぜた。植物を移植後28日目に、地下部植食者としてマメコガネ幼虫を鉢に一匹加えた後、さらに28日間栽培した。その後、刈取り、乾重量を秤量した。

地下部植食者がいないとき、均質な栄養塩分布ではヘラオオバコで、不均質な分布ではホソムギで、個体重が有意に大きかった。また、不均質な分布下のホソムギでは、地下部へ物質分配が有意に多く、栄養塩の多い土壌への応答性がより高いことが示唆された。地下部植食者がいるとき、均質な栄養塩分布では、両種とも個体重が有意に減少した。一方、不均質な分布では、個体重は、ホソムギでは有意に減少し、ヘラオオバコでは有意に増加した。

両種とも地下部植食者に摂食されうるが、不均質な栄養塩分布では、栄養塩分布への応答性の高いホソムギが、もっぱら地下部植食者に摂食されたと考えられる。地下部植食者がいると、選択的な根の配置が、むしろ不利となる可能性がある。


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