| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-018
植物はアリと多様な相利共生関係を持っている。その中で最も良く知られているのが、植物が食物を提供し、アリが植食者などから植物を守るという関係である。この関係では植物の繁殖器官においては、アリが送粉者を追い払うことなどが理由で、アリは悪者になることが多い。そのためにアリを花序から遠ざける仕組みをもつ植物が多く知られている。しかし、アリは植食者から繁殖器官を守り植物に良い影響を与える場合もある。実際、花序に花外蜜腺を形成し積極的にアリを誘引する植物もいくつか知られているが、まだその例は少ない。本研究では、アリ植物であるMacaranga複数種を用い、マレーシアサラワク州でアリを花序に誘引する仕組みについて調べた。アリ植物とはアリに営巣場所や食物を与えて体内にアリを住まわせ、植食者などからアリに守ってもらうという非常に密接なアリとの共生関係をもつ植物である。
まず、Macarangaの花序のアリ誘引構造の有無を観察し、実際にアリがその仕組みに誘引されているか、花序上の防衛アリ数の変化を観察することで調べた。次にアリの訪花序による利益があるのか、アリ排除実験により検証した。また、アリ排除実験ではアリの訪花序により送粉者アザミウマの数が減少していないか確かめた。
実験から、数種は食物体や花外蜜腺を花序上にもち、それらの存在場所や期間は種間差があることがわかった。これらの器官の存在中はアリの訪花序数が増えており、アリは食物体や花外蜜腺に誘引されていることが示唆された。さらに、アリが花序上に存在することにより食害が減少することが明らかになった。また、アリが花序上に存在していても送粉者の数は変化しなかった。このため、アリは花序にとって良い影響を与えていると考えられる。
さらに、アリ誘引構造と関係する特徴や、アリと送粉者の衝突を避ける仕組みなどについても考察する。