| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-031
鳥類による種子散布の研究は様々な方法で行われているが、鳥種ごとに利用する植物を明らかにした研究は少ない。本研究では、標識調査の際に捕獲した鳥類から糞を直接採取し、鳥類の食性や種子散布を評価した。調査は常緑広葉樹を多数含む新潟市の海岸クロマツ林で行い、糞採取は秋季2シーズンと冬季1シーズン行った。秋季に37種1,293個体から糞を採取し、17種の鳥から35種963個の種子を得た。最も多くの植物を利用していた鳥はメジロで(16種)で、エノキを最も多く採食していた(298個)。メジロの口角幅は6.01±0.46㎜(N=42)であり、利用していた果実サイズは同程度かそれよりも小さかった。糞中から種子を得た鳥で、ヒヨドリが最も大きな口角幅だった(13.77±0.42㎜,N=36)。ヒヨドリはタブノキやシロダモなど、10㎜程度の大型果実を利用していたが、エノキなどの小型果実も採食していた。冬季は12種173個体から糞を採取し13種297個の種子を得た。冬季に果実を利用していた鳥はヒヨドリ、シロハラ、シジュウカラ、メジロで、冬季に果実を着けるトベラやアオキ、センダンを利用していた。本研究で種子散布に関わる鳥として、メジロ、ヒヨドリ、ツグミ類、ウグイスの重要性が示された。本調査地に生育する植物の種子散布に関わる鳥類が明らかとなり、海岸クロマツ林の植生遷移の進行と鳥類群集の間に密接な関係があることがわかった。また、節足動物の破片が含まれる糞が多数得られ、鳥類は秋季も動物質を利用していることがわかった。これは遷移が進行した海岸クロマツ林に、秋季にも多数の昆虫が生息していることを示している。