| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-037

チシマザサ節とチマキザサ節の棲み分けを規定する気候要因の解明と温暖化の影響予測

*津山幾太郎(森林総研),中尾勝洋(森林総研),堀川真弘(トヨタ・バイオ緑化),松井哲哉(森林総研・北海道),小南裕志(森林総研・関西),上條隆志(筑波大・生命環境),田中信行(森林総研)

多雪地域の林床優占種である,チシマザサ節とチマキザサ節の棲み分けを規定する気候要因とその閾値を全国スケールで明らかにした.また,温暖化が両節間の勢力関係(優勢度)に与える影響を予測した.

ササ属2節の棲み分けと気候との関係の解析には,分類樹モデルを用いた.応答変数に植物社会学ルルベデータベースから抽出した2節の在・不在を,説明変数に暖かさの指数(WI),最寒月最低気温(TMC),夏期降水量(PRS),最大積雪水量(MSW),冬期降雨量(WR)を用いた.分類樹の末端ノードにおける,ササ属2節の分布確率の差を算出し,2節間の勢力関係を指標する「優勢度」とした.現在の気候には3次メッシュ気候値(1953-1982年平均)を,将来の気候にはRCM20(2081-2100年平均)を用いた.モデルの予測精度は,チシマザサ節/チマキザサ節の分類誤判別率(正答率)で判断した.

分類樹モデルの正答率は82.0%だったことから,両節の全国スケールにおける棲み分けは気候条件によってほぼ説明されることが示唆された.両節の棲み分けを規定する気候要因として,MSWが最も重要であり,次いでPRS,WR,WIが同程度に重要であることがわかった.MSW≧338.9mmの多雪地域では,チシマザサ節が優勢であった.MSW<338.9mmでは,PRS≧1286mm,またはPRS<1286mm,かつMSW<182.3mmでチマキザサ節が優勢となった.2081-2100年の気候下では,現在チシマザサ節が優勢な地域の70.8%がチマキザサ節が優勢な地域に変化すると予測された.


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