| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-118

落葉広葉樹二次林皆伐後4年間での林分構造変化 -低木林が高木林へと変わるとき-

*村尾未奈(東農大・林学専攻), 正木隆(森林総研), 佐藤明(東農大・地域)

日本の広葉樹林の多くは燃料革命以前に薪炭材として,近年では椎茸原木を得るために継続的な里山利用が行われてきたが,現在ではそれらの利用は激減し,伐採後に放置されることがめずらしくない.このような連続した強度の人為撹乱が中止された後の森林は,どのような遷移系列を経るのか不明な点が多い.茨城県北茨城市の小川群落保護林はコナラ,イヌブナを主とした成熟二次林であり,その近隣には前述のような撹乱後に自然状態に置かれた森林が数多く存在する.本研究ではこれら様々な林齢の森林において過去と現在の成長から発達過程を解析し,林分構造変化の推測を試みるものである.

調査地は茨城県北茨城市と福島県いわき市の落葉広葉樹二次林で,本研究では以下の3データを利用した。1990年代半ばに設定された4箇所のプロットの毎木データ(1),伐採後1年を経過した二次林に設定されたプロットの毎木データ(2007年測定)(2),そしてこれら5プロットを2009~2010年に再び測定したデータ(3)である。2009年時点での林齢は52年・43年・21年・15年(1),および3年(2)であった。樹木の初期成長パターンは樹種各々の特性をもっており,その特性を成熟二次林(小川群落保護林)における生活形と広葉樹二次林普遍種の乾重アロメトリから得られた生産物配分特性(同化器官・支持器官)とに分類し,解析を行った.その結果,伐採直後ではサクラ類やタラノキなどの先駆種や低木種が,成熟二次林での林冠構成種となるコナラやクリと同等に優占するが,4年目には低木種の密度が減少し,成層構造の発達がみられた.配分特性の観点からは,林齢増加とともに同化器官への配分を重視する種が次第に増加する傾向が見られ,生活形の観点からは,伐採後60年程度まではブナ・イヌブナ等の耐陰性の高い樹種より耐陰性の低い高木性樹種が増加していく過程が明らかとなった.


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