| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-132

汽水湖沿岸域からのCO2、CH4フラックスに与える水位と気圧変化の影響

*山本 昭範(農環研),廣田 充(筑波大・生命環境),鈴木 静男(環境科学技術研),濱 健夫(筑波大・生命環境)

水位は、様々なプロセスへの関与を通して炭素動態に影響を与える主要な環境要因であることが指摘されている。特に海洋付近の汽水湖沿岸域では、潮位変動に伴う水位の時間変動が顕著である。したがって、水位の影響を明らかにするためには、潮位変動を含め水位の時間変動を考慮する必要がある。また、水位の影響は植生等の違いだけでなく、日変化や季節変化などの評価する時間スケールによっても異なる可能性が高い。そこで本研究は、汽水湖沿岸域の3つの植物群落(ヨシ・イ・ススキ群落)を対象とし、異なる時間スケールにおけるCO2、CH4フラックス(炭素フラックス)に与える水位の影響を明らかにすることを目的とした。

本研究では、炭素フラックスの月積算値や年間値に与える水位の影響を明らかにするために、実測した炭素フラックスと温度で標準化した炭素フラックスの比を用いた。その結果、月積算値や年間値に与える水位の影響は群落間で異なることが明らかになった。水位の時間変動の影響を考慮した炭素フラックスの月積算値は、地温のみで推定した場合に比べて、ヨシ群落では年間を通して全ての月で増加したのに対し、イ群落では月によって増減の傾向が異なった。このような水位の影響の違いは、群落間の水位変化の大きさや変化パターンの違いが影響していると考えられた。また、炭素フラックスの月積算値に与える水位の影響の大きさは、大気圧の状態によっても異なった。特に、大気圧が急激な減少過程にあるときの水位の影響は、その他の大気圧の状態の時に比べて大きく増加することが明らかになった。ヨシ群落やイ群落における年間炭素フラックスは、水位・大気圧の影響を考慮すると、地温のみで推定した場合に比べて1.26~6.64倍増加した。しかし、ススキ群落において水位は月積算値や年間値にほとんど影響を与えていなかった。


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