| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-188

遺伝変異から見たウスバシロチョウの集団構造

*田村英之,土田浩治 岐阜大院・昆虫生態

ウスバシロチョウ ( Parnassius citrinarius ) は半透明の翅をもつアゲハチョウの一種である。日本国内では北海道から本州、四国にかけて分布しているが九州には分布していない。本種は低地から高山帯にかけてパッチ状の個体群を形成しており、個体群間で遺伝的に分化していると考えられる。

本研究では北海道から本州、四国にかけての各地で採集したウスバシロチョウを用いて、両性遺伝する核遺伝子と母系遺伝するミトコンドリアDNAについて分析を行った。核遺伝子座についてはアロザイム2遺伝子座、マイクロサテライト2遺伝子座の合計4遺伝子座について分析を行った。ミトコンドリアDNAについてはCOI領域およびCOII領域の合計1191bpの塩基配列をシーケンスにより決定した。

STRUCTUREを用いて核遺伝子を分析した結果、本州中部の個体群が東日本や中国地方、四国の個体群と遺伝的に異なり、その境界が長野県付近と琵琶湖付近に位置することが示された。ミトコンドリアDNAの系統解析の結果、本種は遺伝的に3つの集団に分化していることが示された。これらの集団は地理的な分布にほぼ対応し、中国地方西部・四国、東日本、中部・近畿地方にそれぞれの集団が分布することが明らかになった。また、系統関係から中部・近畿地方の集団は東日本の集団から分化したと考えられた。

以上の結果から、日本に分布する本種は最初に中国地方西部・四国の集団が分化し、その後東日本、中部・近畿の集団という順に分化したと考えられた。


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