| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-193

サンショウウオがミズムシのサイズ構造に与える影響  ~オタマジャクシのいるとき、いないとき~

*高津邦夫(北大・農),服部充(信大・理・生),岸田治(北大・FSC)

生物集団の形質分布は時空間的に変異するが、それは形質分布にかかる選択と、集団を構成する個体の成長や可塑性の結果である。形質分布動態の決定機構について調べた過去の研究のほとんどは2種系を対象としており、直接相互作用の影響に注目してきた。しかし自然界で生物種は複数の種と直接あるいは間接的に関わりあっており、形質分布が間接相互作用の文脈でどのように形作られるのかを知ることは興味深い。私達は、エゾサンショウウオ幼生(捕食者)、エゾアカガエル幼生(被食者)、ミズムシ(被食者)の3種からなるモデル系において2種の両生類がミズムシ集団の体サイズ分布に及ぼす影響を分析し、形質分布に対する間接効果の存在を確かめた。実験では①ミズムシのみ、②ミズムシ+サンショウウオ、③ミズムシ+カエル幼生、④ミズムシ+サンショウウオ+カエル幼生、という4つの処理を用意し、10日ごとに生存している全てのミズムシを計測することで体サイズ分布の動態を調べた。「ミズムシのみ」と「ミズムシ+カエル」は、実験期間を通してサイズ分布に違いがなかったが、「ミズムシ+サンショウウオ」の分布の平均は、実験開始からまもなくすると他の全ての処理に比べて大きくなった。「ミズムシ+サンショウウオ+カエル」ははじめのうち、「ミズムシのみ」や「ミズムシ+カエル」と同様の分布であったが、20日後にはこれらよりも平均サイズが大きくなり、やがて「ミズムシ+サンショウウオ」処理と同じ値をとるようになった。以上の結果は、ミズムシのサイズ分布に、カエル幼生は直接的には影響しないが、サンショウウオを介し間接的に影響することを示唆する。この間接効果は、3種全てがいる場合にサンショウウオがカエル幼生を捕食することにより、ミズムシに対する捕食圧の強度が時間的に変異することによってもたらされた。


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