| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-201

農法の違いが水田節足動物群集に及ぼす影響 5.環境保全型と慣行型の比較

*西城洋(農研機構・中央農研),森本信生

近年、農業の持つ物質循環機能を活かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料や農薬の使用による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業技術(環境保全型農業技術)の開発や普及が進められている。また、食料・農業・農村基本法においても、農業生産活動を国土・環境保全に役立てるために環境保全型農業を確立することが目標とされている。しかし、この環境保全型農業が野生生物に及ぼす影響等の知見は不足しており、生物多様性の保全や向上の観点から、環境保全型農業が天敵など農業に有用な生物に及ぼす影響を定量的に評価することが求められている。そこで本研究では、利根川流域米麦二毛作平地水田地帯の環境保全型水田と慣行型水田で、稲株上に生息する節足動物を調査し、環境保全型水田で特徴的に見られる種を明らかにすることを試みた。

調査地は、埼玉県行田市、同本庄市および群馬県邑楽郡千代田町の3地域を選定し、各地域で環境保全型および慣行型の水田を複数対設定した。採集は、捕虫網によるスウィーピング法および粘着板を使用した払い落とし法を併用し、8月上中旬(出穂前)および9月上中旬(出穂後)の計2回行った。

本研究の結果、テントウ類幼虫およびアタマアブ類が環境保全型水田で特徴的にみられる農業に有用な節足動物種であると考えられた。また、環境保全型栽培管理で元肥の化学肥料施用量を減らすと、コモリグモ科クモ、ヤマトクサカゲロウ幼虫、テントウ類幼虫およびギフアブラバチの生息個体数は減少する可能性があると考えられた。


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