| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-204

南西諸島におけるアリモドキゾウムシの色彩変異の定量的解析

*城本啓子,熊野了州,栗和田隆(沖縄病害虫防技セ・琉球産経), 永山敦士(沖縄農研セ), 原口 大(沖縄病害虫防技セ)

アリモドキゾウムシCylas formicariusの鞘翅は,金属光沢のある色彩を示し多型があることが知られている.日本の南西諸島における本種の色彩多型の地理的分布が調べられた結果,一般的に見られる黒青色型(BE型)と黒緑色型(GE型)の2型の他に、黒褐色型(PE型)が宮古・八重山諸島においてごく低頻度で確認されている.これまで本種の色彩型はヒトの視覚によって定性的に分類されてきていた.しかし,3型は明確な地理的分布ではなく,同所的にも分布しており中間的な個体も多く明確な判別基準はない.また,本種の色彩型の遺伝的基盤も明確ではない.そこで我々は,南西諸島の主な島(5地点)からフェロモントラップで集めたオス個体群の鞘翅の色彩についてスペクトロフォトメーターを用いてヒトの可視領域(400-700nm)にある反射スペクトルを測定し、本種の色彩を定量的に測定し解析した.測定したすべての個体群において反射スペクトルに1つの大きなピークが見られた.その結果,反射スペクトルのピークが沖縄本島中部では約500nm,八重山諸島の各個体群は550nmと明確な違いが見られた.

また、それぞれBE型とPE型の色彩を選抜固定した系統を作り,実験的に各色彩型の雌雄をかけ合わせた交雑系統F1を作った.BE型とPE型の親系統およびそのF1の雌雄それぞれの鞘翅についても同様に反射スペクトルを測定した.その結果,親のBE型は500nm,PE型は420nmと700nmにピークが見られた.一方,それぞれのF1は550~600nmにピークが見られる緑色を示した.従って,GE型はBE型とPE型の中間型であると考えられた.


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