| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-220

河川底生動物の摂食速度-機能群、温度、サイズとの関係-

*小林草平・赤松史一・矢島良紀・中西哲・三輪準二(土研)・天野邦彦(国総研)

河川生態系において水生昆虫を主とする底生動物は、水中有機物、付着藻類や微生物の摂食を通して、生態系の栄養塩や有機物の動態に関わっており、底生動物の存在によって河川水の栄養塩や有機物濃度が大きく変わる事例も知られている。どのような状況で底生動物が栄養塩や有機物に大きく作用するかを理解していく上で、底生動物の摂食速度の一般的な大きさ、その変動要因を知ることは重要である。そこで本研究では河川底生動物の摂食に関する既存研究を収集し、摂食速度について、摂食機能群との関係、体サイズとの関係、水温との関係を整理した。

個体重量あたりの摂食速度を求めている国内2件、国外53件の既存研究を集めることができ、対象はカゲロウ目、トンボ目、カワゲラ目、トビケラ目、ハエ目、ヨコエビ類等多岐に渡っていた。摂食速度(体重%/1日)は1–400%まで様々な事例が見られたが、摂食機能群に分類すると、濾過食者や堆積物食者が最も大きく、次いで藻類食者や落葉食者、捕食者が最も小さい傾向にあった。一方で、摂食速度の大きいものほど消化効率は小さい傾向にあった。このことは食物の質の観点から考えると、質の悪い食物を食べる底生動物ほど摂食量を高めて必要な栄養量を頑張って確保している状況が伺える。捕食者を除くグループでは、個体重と摂食速度には明瞭な関係があり、小さい個体ほど摂食速度は大きかった。河床面積あたりの底生動物が同じ現存量であったとしても、より小さい個体によって構成されているほど面積当たりの底生動物による摂食量が大きいことを意味している。また、摂食速度の水温の間にも関係があり、0-20℃の範囲では温度とともに摂食速度は大きくなり、20℃以上では大きな変化は見られなかった。群集の摂食機能群やサイズ構成、また水温から、河床面積あたりの底生動物による潜在的な摂食速度を推定することが可能であると考えられる。


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