| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-246
日本などの温帯域においてミツバチ以外の社会性蜂類では、秋に羽化した新成虫のメス(Gyne=次期女王候補)のみが母巣を離れ、越冬場所に移動して春までを過ごす。スズメバチ類やマルハナバチ属とアシナガバチ属の一部は、メスが樹皮の下や朽木に穴を掘って潜り、単独で越冬するが、アシナガバチ属の残りの一部とホソアシナガバチ属では、スズメバチの廃巣や主にカミキリムシの幼虫によって掘られた樹洞などに複数個体のメスが集まって越冬を行っていることが知られている。特にホソアシナガバチ属Parapolybiaでは、越冬集団が数千個体からなる大集団で形成されていることも報告されている。一般的に変温性の昆虫類の集団越冬は、体温維持や捕食リスクの回避などのメリットによるものと考えられているが、糸状菌などに感染した場合には感染拡大のリスクが生じることもある。しかしながら、社会性狩蜂において越冬生態に関する研究例は少なく、越冬集団を形成する個体同士の血縁関係などについてもこれまで報告が無い。
さらに、社会性狩蜂のうちアシナガバチ亜科のチビアシナガバチ族4属は主に熱帯域を中心に分布しているが、そのなかでホソアシナガバチ属は唯一、温帯域へも分布を広げている。よって、ホソアシナガバチ属における越冬様式を明らかにすることは、本属が温帯域への分布拡大を遂げた過程を考察するうえで非常に重要である。そこでホソアシナガバチ属の分布域において最も北方の日本に生息しているムモンホソアシナガバチParapolybia indicaについて、複数の地点で越冬集団の採集と観察を行い、越冬場所や集団サイズと個体の行動を調査するとともに、集団を形成する個体のカストや由来コロニーの推定を行い、越冬集団がどのように形成されているのか考察した。