| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-328

絶滅危惧植物はどこにいる? 1: 分布推定手法の検討

*石濱史子, 赤坂宗光(国環研)

保護区等の検討のために生物の分布を把握する際に有効な手段として、統計的な分布推定モデルが広く活用されている。気候・地形・土地利用等の環境情報に基づいた分布推定モデルを用いることで、潜在的ハビタットを推定し、踏査で見逃された生息地を補完することが出来る。また、現在の分布情報に基づいてパラメータ推定したモデルを、将来の土地利用変化・気候変動等による分布変化の予測に応用することも可能である。

近年、分布推定手法は目覚しい発展を遂げ、Maxent, randomForest等の新しい手法が、高い推定精度を持つと評価されている。しかし、広域スケールの生物分布データの多くは博物館の標本等の在情報のみで不在情報がない場合が大半である。在のみ情報からは野外での在/不在の比率がわからないため、高い調査努力量をかけて調査が行われることが多い希少種では、存在確率を高めに推定してしまう可能性がある。また、不在情報がない場合には、在情報がない地点をbackgroundやpseudo-absenceとしてモデリングを行うが、調査範囲に偏りがあって、生息可能性が高い環境条件であるにも関わらず見逃された範囲をbackgroundとして用いてしまうと、高精度とされる最新のモデルでも、推定に大きな偏りが生じうることが最近明らかにされた。

本発表では、日本国内で最も充実した生物分布情報の1つである、維管束植物レッドリストの基本データを用い(非公開を前提に日本植物分類学会絶滅危惧種問題専門委員会の許可の下で使用)、特に以下の2点に着目して絶滅危惧植物の分布推定に適した手法の検討を行う。1.幅広い気候帯にまたがり、地形も変化に富んだ日本列島において、Maxent等の手法がどれくらい有効であるか。2.backgroundの選択によって推定がどれくらい影響を受けるか、主要四島全体とした場合と調査員人数に基づく重み付けをする場合などで比較を行う。


日本生態学会