| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-076

葉内水の酸素安定同位体比を用いた乾燥地植物の夜露の利用の評価

*大橋達矢,松尾奈緒子(三重大院・生物資源) 楊霊麗,吉川賢(岡山大院・環境),張国盛,王林和(内蒙古農業大学)

水資源が少ない乾燥地において植物は乾燥ストレスを受けながら生育している。こうした地域のひとつである中国内蒙古自治区・毛鳥素沙地では、昼夜の激しい温度差により夜間に土壌や葉の表面で大量の露が発生する。その露を植物が利用しているかどうかを確かめることが本研究の目的である。対象樹種は毛鳥素沙地に優占する匍匐性常緑針葉樹の臭柏(Sabina vulgaris Ant.)とする。臭柏は匍匐枝から土壌表層に不定根を伸ばし、雨季など土壌表層に水がある場合は吸水源としている。臭柏による夜露の吸収経路として、ア)土壌あるいは葉の表面で結露した水が土壌表層に浸透し、その結露水と不定根を通して吸収している可能性と、イ)葉についた露を気孔あるいはクチクラから吸収している可能性が考えられる。本研究ではイ)について明らかにするため、結露水、茎内水、葉内水、水蒸気の酸素安定同位体比の時間変化の測定を行った。既往研究により、根から吸った水の酸素安定同位比は茎内においては変化せず、葉内で変化することが知られている。葉内水の酸素安定同位体比を決定するプロセスとして、蒸散にともなう酸素安定同位体比の上昇(Craig-gordonモデル)、葉内での水の移流・拡散の影響(Pècletモデル)、葉の含水率の時間変化(Non-steady stateモデル)が報告されているが、気孔やクチクラからの露の吸収は考慮していない。したがって、これら既往のモデルで予測される葉内水の酸素安定同位体比の値と実測値に差があるかどうかを調べる。その差から、気孔やクチクラを通して葉内に吸収される結露水の寄与を推定する。


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