| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-087

東北地方の多雪集落における山菜の生育地および採取地の環境条件

*松浦俊也, 杉村乾, 宮本麻子, 田中浩, 勝木俊雄, 滝久智(森林総研), 田中伸彦(東海大・観光)

ブナ帯の植生が広がる東北地方日本海側の多雪集落では、日常的な山菜採りが盛んであり、山菜採りは重要な供給・文化的な生態系サービスのひとつである。山菜の種ごとに生育地や採取地の分布特徴を調べることで、多種類の山菜採りを可能にする景観レベルでの環境条件を明らかにし、資源の持続的利用のための指針を得られると考えられる。

そこで、2009から2010年にかけて、福島県南会津郡の2集落において、異なる地形や植生を含むポイント・トランセクト法にもとづく調査ルートを複数設定し、ゼンマイ、ワラビ、クサソテツ、ウド、フキなどの複数種の山菜の分布調査を行った。さらに、雪解けから初夏にかけての集落住民の採取行動をGPSにより把握した。次に、地形条件や植生分布、道路からのアクセス性などをGISによって計算し、一般化線形モデルを用いて種ごとに山菜の生育地と採取地に関わる環境条件を調べた。

山菜の生育地は、出現種数は沢沿いの日陰などに多い傾向がみられ、沢沿いや下部斜面などに分布が集中するクサソテツ、急傾斜地の低木林などに多いが林内に広く分布するゼンマイ、伐採跡地や植林地に多いワラビなど、種ごとに分布傾向に明瞭な違いがみられた。次に、種ごとの採取地は、生育地の分布に比べ、地形や植生、アクセス性などによって、より強く制約される傾向がみられた。以上の結果は、山菜の種ごとの生育地の分布が、渓畔域や雪崩地などにおける土砂や水の流動や融雪時期の違い、伐採などの人為撹乱の違いに対して異なる対応関係をもつことを示していると考えられた。また、分布地のうち、とくに生育環境条件とアクセス性がともに良く採取効率の高い場所が採取地として選択されていることを示している。ここから、とくに生育地と採取地の環境条件が類似し、分布が局所的な種ほど、資源の持続的利用のための配慮が必要と考えられた。


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