| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-107

箱根仙石原における植物珪酸体および微粒炭分析

*高岡貞夫(専修大・文),吉田真弥(鉱研工業)

伊豆・箱根地域には、森林伐採や火入れなどの影響を受けて成立したと考えられるササ草原やススキ草原が分布する。これらの草原の起源や変遷史、特に過去の火入れとの関係については不明な点が多い。本研究では、長期的に火入れが行われてきた箱根町仙石原のススキ草原において、土壌中の植物珪酸体と微粒炭の分析を行い、ススキ草原の成立過程を検討した。

仙石原のススキ草原内において深さ1.2mの試坑を設け、試坑断面中から合計41点の試料を採取した。試料中の植物珪酸体を同定した結果、草本起源の植物珪酸体7分類群、木本起源の植物珪酸体4分類群が認められた。草本起源の植物珪酸体のうち、ススキ型は全試料に出現したが、68cm深から上方で特に多く、地表に近いほど増加する傾向が認められた。キビ型、棒状型、ポイント型は、いずれも地表から約20cmまでに多く出現し、前2者については、ススキ型と同様に地表に近いほど多くなる傾向があった。一方、ネザサ節型とチマキザサ節型は、最下部の試料から連続的に出現し、前者は深さ60cmより上で地表に近付くほど減少する傾向が認められた。木本起源の植物珪酸体のうちスギ科型は地表から約30cmまでに少量だけ出現した。樹木A型は最下部から地表付近まで出現したが、量は多くはなかった。樹木B型は最下部から29cm深まで多く出現したが、それより上方ではほとんど出現しなかった。微粒炭は、110~59cm深でほとんど検出されなかったが、56cm深から上方では一定量が含まれ、6cm深から地表に向かって急激に増加していた。

53cm深から得た土壌中の腐植を用いた年代測定により、1159-1225calADの年代値を得た。この年代値と上述の植物珪酸体・微粒炭の出現傾向を考え合わせると、調査地では約1000年前から火入れ等の人為的影響によって植生に変化が起こり、現在のススキ草原が成立するようになったと推定される。


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