| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-120

岩礁潮間帯を利用する遊泳魚類の多様性とその決定要因

*大井文貴(龍谷大学),丸山敦(龍谷大学)

珊瑚礁域にある岩礁帯潮間帯は海洋生態系の中で最も高い純一次生産速度をもち、かつ多様な生物が利用する重要な生息地である。同時に、人間活動の影響を受けやすい場所であるが、情報不足によって生物群集への影響に対して予測を欠く人為的な改変が行われている。そこで、本発表では環境要素と遊泳魚類の種組成および個体数との関係性を、潮間帯単位およびタイドプール単位で解明することを目的とした。

沖縄県伊江島の9ヶ所の潮間帯で、それぞれタイドプール18−31個を対象に調査を実施した。環境要素として、潮間帯の幅、タイドプールの大きさ、深さ、礁縁部からの距離の測定を行った。1つの潮間帯ではより詳細な解析のため、水温、凹凸度、タイドプール内の穴数の測定も追加した。遊泳魚を目視で同定、カウントし、種数、個体数、体長、密度、Simpsonの多様度指数をタイドプール毎に算出した。

潮間帯9カ所を比較すると、深くて容積が大きいタイドプールが多く、礁縁部から陸までの距離が離れている潮間帯ほど、種数、個体数、大きな個体が多く生息していた。Bray-Curtis 指数を用いた種組成の比較からは、水深が異なることで種組成が異なることがわかった。次に、タイドプール単位で比較すると、深くて温度の上昇幅が小さいタイドプールほど多様性が上がる結果となった。また、タイドプールごとの種組成の違いは、タイドプールの深さと温度の違いに加えて、礁縁部からの距離の違いによっても生じていた。以上より、岩礁潮間帯を利用する遊泳魚に最も影響を与える環境要因は、深さとそれに伴う水温変化であり、容積や礁縁部からの距離も補助的に影響を与えていると考えられる。


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