| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-184

サケ科魚類の密度依存型競争に河川環境が与える影響の解明を目指して

*長谷川功(さけますセンター),山崎千登勢(北大環境科学院),大熊一正(さけますセンター)

河川棲サケ科魚類において、密度依存型競争は個体の成長や個体群調節を考える際に重要である。この密度依存型競争を理解するポイントとなるのが2つの競争様式:採餌空間を巡って他個体と争う干渉型競争と、個体間の干渉を伴わずに餌資源を全個体が利用する場合に生じる消費型競争である。どちらの競争が生じるかについては、密度の影響が指摘されている。低密度下では、採餌空間を巡って競争することなく各個体が採餌するので、消費型競争の影響が強くなる。一方、密度が増加すると、利用できる空間が限られてくるので、採餌空間を巡る干渉型競争が強く生じる。密度には当然ながら、環境要因が強く影響する。さらに、演者による実験条件下での先行研究によって、環境要因(視覚的障害物の有無・流速条件)が競争様式に直接影響することも明らかになった。本研究では、環境要因・密度・競争様式を統合的に考慮して密度依存型競争を理解することを目指す。その第一段階として、サクラマス(ヤマメ)当歳魚を対象として、野外調査を行った。

調査は、北海道千歳市を流れるママチ川で行った。2009年、2010年の6月にのべ28調査区で、サクラマス当歳魚の密度推定、体サイズ測定を行い、干渉型競争の激しさの簡便な指標となる体サイズのばらつき度合いを変動係数(CV)で評価した。また、サケ科魚類のハビタット利用を評価するうえで一般的に考慮される環境要因(川幅・淵の割合・平均流速・平均水深・倒流木などの障害物の量)を計測した。

その結果、密度と体サイズの間には、密度依存型競争を示す負の指数曲線が描けた。また、河川規模が大きくなると密度は低下した。したがって、河川規模が大きい場所ほど、消費型競争が強く生じる可能性が考えられた。体サイズのCVと環境要因の間には明瞭な関係はみられず、環境要因の競争様式への直接的な影響は現段階では検出できていない。


日本生態学会