| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-204

ウミネコの繁殖前の食性が繁殖投資量におよぼす影響

*風間健太郎(名城大・農), 鈴木優也(北大・水産), 富田直樹(名城大・農), 伊藤元裕(北大・水産), 新妻靖章(名城大・農), 綿貫豊(北大・水産)

海鳥の繁殖時期や繁殖投資量は気象条件や餌資源量などの外部環境要因の影響を受けて年ごとに大きく変化する。北海道の島嶼で繁殖するウミネコの産卵時期や産卵数は大きな年変動を示す。この年変動には、繁殖前の親鳥の餌が影響していると考えられているが、洋上で多くの時間を過ごす海鳥の繁殖前の食性を直接観察することは困難である。本研究では、産卵直前の親鳥の血漿安定同位体比分析を用いて本種の繁殖前の食性を明らかにし、それと産卵時期、産卵数、および卵体積との関係を5年間にわたり調べた。一腹卵数と卵体積は、血漿窒素同位対比が低いほど、すなわち親鳥が栄養段階の低い餌を利用した年ほど大きくなった。一腹卵数や卵体積が最も大きかった年の血漿窒素同位対比から濃縮率を差し引くと、繁殖地周辺で採集されたオキアミの窒素同位対比に近い値になったことから、ウミネコはオキアミを多く摂餌した年ほど卵への投資を増やすと考えられた。オキアミは魚類に比べて栄養価の点でやや劣るが、春先に海表面で集群するため、獲得効率が高い餌だと考えられる。一方で、この5年間のデータからは、産卵時期は繁殖前の食性と関連している証拠は得られなかった。より長期のデータを利用した先行研究では、ウミネコはオキアミにとって好適な海水温の年には早く繁殖する傾向が見られており、他の環境要因の効果が大きく、繁殖時期は餌タイプ自体の影響は何らかの理由で受けづらいのかもしれない。


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