| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-245

植物群集の開花フェノロジーとハナバチ相の関係に対する外来植物の影響

*笠木哲也,宇都宮大輔,木村一也(金沢大),湯本貴和(地球研),中村浩二(金沢大)

植物群集においては植物が種間で時期をずらしながら連続的に開花することによってポリネーターとなる昆虫相が維持される。外来植物の開花は植物群集内の開花フェノロジー構造を変化させ、在来植物と訪花昆虫の関係に影響を及ぼし得る。外来植物の開花が訪花昆虫の在来植物への訪花行動に及ぼす影響を明らかにするため、本研究ではハナバチ類に着目し、石川県能登半島の低地から山間部にかけての5ヶ所のサイトでハナバチ類を定期採集して種構成を調べるとともに、植物の開花フェノロジー及び開花量、訪花頻度を調査した。

在来植物の開花フェノロジーは全てのサイトで種間の連続性を示したが、外来植物はその連続性から外れて長い開花期間を示す種が多かった。在来植物の開花量は山間部の方が多く、低地サイトでは相対的に外来植物の開花割合が高かった。外来植物は刈り取り等の人為の影響に対する再生力が高く、開花量の変動が大きかった。山間部では外来種の多い場所と少ない場所にサイトを設定したが、外来種の少ないサイトでは在来植物とハナバチ類の種間対応関係が見られた。一方、外来種の多いサイトではハナバチ類の訪花が外来種に偏り、在来植物への訪花頻度が低くなる傾向があった。しかし在来植物へのハナバチ類の訪花頻度は人為的要因による外来種の開花量の増減に伴って変化した。在来植物が種数、開花量ともに少ない低地サイトではハナバチ類の種数と個体数も山間部に比べて少なく、相対的に外来植物への訪花頻度が高くなった。

外来植物はハナバチ類と在来植物の相互関係を阻害する可能性が示された。開花量の変動が大きい外来種はハナバチ類の在来植物への訪花頻度を不安定にした。また、ハナバチ類の餌資源となる在来植物が少ない条件では外来植物は重要な餌資源になる可能性があるが、在来植物への訪花を助長しないとともにハナバチ相の維持にも貢献しないことが示唆された。


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