| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-280

ヨコエビに研究者の”アイ”を ~同定ガイドブックの作成事例~

*小川洋,風呂田利夫(東邦大・理)

ヨコエビは、端脚目に属する甲殻類であり、日本を含め世界中に広く分布する。その生息場は、深海から干潟,砂浜,湖沼,河川,湿地,畑まで実に多様であり、それぞれの生態系において分解者や餌資源として重要な役割を果たしている。特に浅海域においては、密度・種類数ともに主要なベントスであるにも関わらず、同定の難しさからこれまで「ヨコエビ類」として十把一絡げに扱われることが多かった。

こうした実態を踏まえ、底生生物を扱う研究者を含めより多くの人がヨコエビに目 (eye) を向けるきっかけを作ることを目的として、一般向けの冊子「東京湾のヨコエビガイドブック」を作成した。必要なデータや画像は、卒業研究として東京湾のヨコエビ相を調査する過程で得られたものを主に用いた。「パワーポイント2007」によって作成しPDFファイルとして保存することで、動作する環境を選ばないよう配慮した。利用対象は高校生以上とし、市民団体や教育機関などが干潟浅海域で生物の観察・調査を行う際に使用できることを想定した。「はじめに」の章では、生物学的な特徴を分類や生態などの視点から多角的に述べた。メインとなる「種類の解説」では、マトリクス式の検索表を掲載し、比較的観察しやすい形質を用いて科までの同定を行えるよう配慮した。また、1種 (群) につき1ページを割き、属や種の形態的特徴をピックアップするとともに、生息環境や名前の由来などを掲載した。他にも、調査地の概要とそこで得られたヨコエビを紹介する章や、研究方法を提案する章を設け、巻末に同定資料の一覧を載せるなど、ヨコエビを材料に研究を行う際に参考となるように工夫した。今回のポスター発表では、実際のガイドブックを展示するとともに、工夫点などを紹介する予定である。

ガイドブックの入手に関しては未定だが、東邦大学理学部東京湾生態系研究センターを窓口とすることを検討している。


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