| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-281

ヘイケボタルを対象とした市民参加型手法の検討

*柿本恵里那(東邦大院・理・生物),長谷川雅美(東邦大・理・生物)

身近な自然環境が失われるにつれて、地域の生物や自然環境への関心が高まり、自ら保護・保全対象生物の生息状況をモニタリングし、その結果を生かした保全活動に取り組む市民団体が増えている。しかし、従来の手法では、市民が思い思いの時間・場所で任意に調査していたため、定量的・客観的な情報としての価値が正当に評価されていなかった。この問題を解決するためには、調査場所の指定や研修会の開催、対象種の絞り込みが重要である。そこで、本研究では里山生態系の象徴種であるヘイケボタルを対象とし、ホタルを通した里山保全への関心を喚起しつつ、ヘイケボタルの生息状況をモニタリングする手法を提案し、市民参加による同時広域調査を行い、その結果を評価した。

成虫の発生期間内であれば、調査時期の違いによるデータのばらつきは小さく、ホタルの生息密度の年変化や、地域による違いを検出できると考え2010年7月31日と8月7日の午後7時半~9時にかけて千葉県北西部の12箇所で、広域同時の分布調査を行った。また、7月27・30日、8月1・3・4・8~13日に37箇所で補足調査を行った。

その結果、調査地点49地点中34地点でヘイケボタルの生息を確認した。今回の調査によって新たに17箇所での生息を確認した。同一調査地で7月31日と8月7日に行われた調査の結果を比較したところ、調査日による生息密度の変動は小さく、成虫の発生期間中であれば、調査日を特定しなくても地域間で生息密度の比較を行うことができることが分かった。このことから、夜間調査への参加に際し、参加者各自にとって都合のよい日程を自由に選びつつ、持続的なモニタリングを目指すことが可能となる。さらに、各調査地で市民団体がこれまで独自に行ってきた調査結果をもとに生息密度の長期的変動を把握できる可能性が高まった。


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