| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-287
出会ったことの無い捕食者と被食者を一緒に飼うとどうなるのか?原生動物テトラヒメナ(捕食者)と大腸菌(被食者)を用いて様々な条件で試したところ、捕食者が絶滅する条件はあったが、被食者が絶滅することは無かった。なぜそうなったのか?他の系への拡張性はあるか?などを議論されたい。
捕食・被食の系は食物連鎖を構成する重要な系である。現在観察される系は、捕食者と被食者が出会った後の相互作用による個体群動態や、生物の適応変化などの面において、安定であるといえるだろう。では逆に、出会った直後から不安定である、つまり少なくとも一方が絶滅するのはどのような場合だろうか?私達は、出会ったことの無い捕食者と被食者を一緒に飼ってみることで、これに対する一つの答えを見てみることにした。実験室内の系(マイクロコズム)を用いることで、天然では残らない不安定な系を容易に再現でき、またその系全体を明快に把握することができる。さらに単純な理論モデルからのズレをみることで、新しく注目すべき点を浮き彫りにできる。
具体的には、テトラヒメナと大腸菌を、捕食者と被食者のモデル生物とし、以下の4つの条件で一緒に飼ってみた。①ともに独立増殖可、②被食者のみ独立増殖可、③捕食者のみ独立増殖可、④双方が独立増殖不可。結果、捕食者は①②のときに絶滅し、被食者が絶滅することは無かった。つまり、被食者にとって捕食者が必要なときのみ、捕食者は生存した。また、両者絶滅が稀であることも注目に値するだろう。発表では、これらの結果を元に、捕食・被食の系の特徴について議論されたい。