| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-294
動物の体表に見られる多彩な模様パターンは生物多様性の象徴と言える。体表模様によって交配相手や同種が識別される例は多く知られており、模様の違いが生殖的隔離や種分化の要因となる場合も少なくないと考えられる。同類の模様に対する選好性が強い場合、集団中に他の個体とはまったく異なる新奇な体表パターンをもつ個体群が現れれば、種分化に至る可能性は大きいはずである。そのような例の1つとして、種間交雑による模様パターンの変化を考える。反応拡散モデルを用いたシミュレーションにより、交雑による模様パターンの変化について以下のような知見を得た。
(1) 模様パターンは交雑によって「混ぜる」ことができる。
(2) 模様を「混ぜる」と、まったく別の複雑な模様になる。
例として、シンプルな斑点模様をもつ動物を考えよう。たとえば、黒地に白い斑点【○】をもつ動物と、白地に黒い斑点[●]をもつ動物がいるとする。両者が交雑可能だとすると、交雑個体はどのような模様パターンをもつだろうか? シミュレーションの予測によれば、交雑個体には必ず(親種のような斑点ではなく)擬態的な迷路状のパターンが現れるのである。模様を「混ぜる」ことで生じるこの迷路パターンは、親種のシンプルな斑点模様と比較して中間的・かつ超越的な性質をもつことを示す。また、実際の交雑個体に生じる模様パターンとの比較をサケ科魚類を例として紹介し、模様パターンの混合が交雑による種形成を引き起こす可能性について議論する。