| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-296
赤の女王仮説によれば、寄生者と宿主は、相互に影響して進化し、寄生者は宿主特異性を示すと予測される。カタツムリは、移動能力が低いため、地理的に分化して放散進化した。カタツムリには吸血性のダニが寄生する。しかし、このダニの研究は少なく、局所的に分化しやすい宿主との相互作用や進化史はほとんどわかっていない。カタツムリダニの宿主特異性に関する先行研究は全くない。本研究は、国内で分布を広げつつあるコハクオナジマイマイに寄生するダニの宿主特異性を検証することを目的として行った。ダニの移植実験により宿主以外のカタツムリの種では、ダニはほとんど増殖できなかった。さらに、ダニの増殖は、宿主の生存率を下げることがわかった。本研究により、カタツムリダニが宿主に生存上のコストをもたらし、宿主特異性をもつことが初めてわかった。しかし、このダニは、西ヨーロッパに分布する他のカタツムリ種から採集され分類記載されている。したがって、カタツムリダニは、宿主との共種分化をせずに宿主特異性を進化させていることが予測される。宿主が近年移入したと考えられる本調査地では、ダニに寄生された個体の割合は45%に達する。コハクオナジマイマイの成貝は秋に死滅し、孵化直後の幼貝が越冬する。宿主の生活史に対応して、寄生ダニがどのように宿主と共存し、系統進化しているのかを知ることは今後の課題である。