| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-298
顕花植物において、花粉形態は植物分類群によって異なっており、多くの場合属レベルまで分類でき(高原2007)、花粉化石の同定や系統分類の指標として用いられている。一方で、その形態形質である表面構造や,わずかな大きさの変化が、環境応答やポリネーションに関わる場合も知られており、顕花植物の進化のプロセスを探る上での情報源となっている。これまで,属レベルでの花粉形態に関する先行研究が多く存在する。しかし、属内において、花粉形態の異型性が報告された例は稀である。キンポウゲ科植物は、属内で花粉形態の異型性が報告されている分類群であり(幾瀬ら1956)、さらに同種内で、通常の花粉の他に、不稔と考えられる異形の花粉をもつ種が存在した。このように、属または種レベルで、花粉形態に異型が存在することについての研究はされていない。本研究では、キンポウゲ科の花粉に、異型性が存在することが、どのように適応しているのか検証する。
信州大学標本庫(SHIN)に保存されている標本から採集したカラマツソウ属9種、センニンソウ属6種、イチリンソウ属4種、オウレン属4種、キンバイソウ属2種、シロカネソウ属3種リュウキンカ属2種の花粉をグリセリンゼリー法によりプレパラートに封入し、光学顕微鏡を用い、(何を)観察した。
センニンソウ属、イチリンソウ属、シロカネソウ属の花粉は、属内レベルでの異型性が確認できた。カラマツソウ属、キンバイソウ属では、種内レベルで顕著な異型性が示された。これらカラマツソウ属、キンバイソウ属について、花粉直径を測定し、種ごとに花粉異形性の有無を確認した。また、カラマツソウ属において、染色体数、ポリネーション、開花時期、分布をしめした先行研究と、花粉の異型性の有無が,互いに関連しているかどうかを調査した。その結果,カラマツソウ属では,染色体数が少ないほど異形性を示しやすいことを確認した。