| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-300

年推移変化行列導出法の性質

*長谷川成明(北大・低温研), 高田壮則(北大・院・地球環境)

土地利用の変遷などの調査において、異なる時期に撮影された航空写真等をそれぞれグリッドに分割し、これらのグリッドの土地利用が一定期間に変化する確率から推移変化行列を求めて解析する手法が用いられている。この手法は異なる場所での土地利用の変遷を比較する際にも有効であると考えられるが、推移変化行列をもとめた期間が異なる場合は、単純な比較はできない。

Takada et al.(2010)は行列の累乗根を求めて単年度の推移変化行列(以下、年推移変化行列と呼ぶ)を算出する方法を提案し、期間の異なる推移変化行列の比較を可能にした。しかしながら、行列の累乗根の解には負の要素あるいは虚数の要素を持つ行列が含まれるため、土地利用の解析に用いることのできる、すべての要素が実数かつ正の行列(以下、正の行列と呼ぶ)あるいは実数だが一部に小さな負の要素をもつ行列(以下、小負の行列と呼ぶ)が必ず含まれるとは限らない。どの程度の確率でこれら土地利用の解析が可能な年推移変化行列を得ることができるかを明らかにするために、本研究ではランダムに作成した行列を用いてモンテカルロ法による解析を行った。

完全にランダムな行列について年推移変化行列を求めた結果、正の行列を得られる確率はほぼ10%以下で、行列サイズが大きく、期間が大きいほど小さくなった。小負の行列を得られる確率もほとんどの行列サイズ、期間について20%以下であった。しかしながら、行列が一般の土地利用などでみられる、対角要素が相対的に大きい行列の場合は、小負の行列を得られる確率は90%程度と高いことが明らかになった。


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