| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-302
水槽の中で生育する観賞魚など複数個体が生活空間を共にする生物ではその生活空間内の限られた資源をめぐる競争が生じ、その結果として空間を共有する個体の間に特定のサイズ構造が存在することが知られている。たとえばクマノミやシクリッドの一種では、空間を共有する各個体のサイズ差が一定に保たれるということが報告されている。
これらのサイズ構造は同所的に生息する個体間での繁殖機会をめぐる競争の結果、小さな個体が自ら成長を抑制することによって現れるという説もあるが、餌をめぐる競争からそのようなサイズ構造が生まれると考えることもできる。ここでは餌の取り分を増やすためにコストを払って他個体にいやがらせをするかどうかというゲームと、その結果得られる餌量と払ったコストの差のエネルギー収支によって決まるサイズ成長モデルとを組み合わせた3個体の成長シミュレーションモデルを用いて、どのようなサイズ構造が現れるかを調べた。
モデルは3種類の変数のダイナミクスから構成される。各個体は他の2個体それぞれをいじめるかどうかを各タイムステップで選択し、いじめられた個体の摂餌モチベーションは減少する。ある個体が別の個体をいじめるかどうかは、その行動をとった時のこれまでのエネルギー収支から学習され決定される。また各個体は各タイムステップのエネルギー収支に従って成長し、いじめる相手との体重差がいじめのコストに影響するとする。
これらを組み合わせたシミュレーションを行うと (a)いじめがほとんど起こらない、あるいは互いにちょっかいを出し合うことによって成長が揃う、(b)一個体だけ大きくなって他が抑圧される、(c)個体間のサイズ差が一定に保たれる、などいくつかのパターンが見られることが分かった。いじめのパターンにも、上位個体がより下位の個体をいじめる(狭義でのいじめ)だけでなく、いくつかパターンが見られた。