| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-304

個体ベースモデルを用いた空間個体群動態

*織田奈津季,高須夫悟(奈良女子大・理)

個体群動態の理解は学術的な興味のみにとどまらず、病害虫や感染症の拡大抑制、稀少生物種の保全といった身近な社会問題の解決に有効である。しかし、個体群動態の数理モデルの多くは、数理的に解析がしやすい仮定に基づく集団レベルの定性的記述モデルにとどまっていることが多い。例えば、1個体当たりの出生率が集団サイズに比例して減少すると仮定したロジスティック写像や、 これを指数の肩にのせて得られるRickerロジスティックモデルは、生物学的にどのような意味を持つかは不明である。個体群動態を生物学的に理解するためには、このような定性的な仮定ではなく定量的かつ機械論的な仮定に基づくモデルが必要であると考える。本研究では、集団レベルの記述モデルを個体レベルの出生・死亡の総体として機械論的に導くことを試みる。まず最初に、個体の出生・死亡を機械論的に記述な個体ベースモデルを構築し、集団サイズならびに個体分布のダイナミクスを実現する。 連続空間上に点として個体を表現することで、個体の空間分布は点パターンとして記述される。また 各個体は一定のなわばりを確保し、 なわばり内の餌資源を消費して繁殖する。このなわばりが他個体と重なるとルールに従って重複資源を分割する。このような他個体との相互作用から出生・死亡を繰り返すアルゴリズムを個体ベースで記述する。 次に、点パターンとしての個体ベースモデルのダイナミクスを集団サイズならびにペア相関関数の観点から数理的に記述することを試みる。各個体の出生・死亡の機械論的相互作用から集団レベルの現象を理解することが本研究の目的である。 本研究で取り組む個体ベースの視点に基づくアプローチでは、各個体が持つ属性の進化を容易に実装することが可能である。個体群動態ならびに進化動態をよりよく理解するための個体ベースのアプローチについて議論する。


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