| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-306
性染色体によって最終的な性決定が行われず、受精卵が分化する過程でさらされる温度によって性が決まる性決定様式を温度依存性決定(TSD:temperature-dependent sex-determination)と呼ぶ。TSDは爬虫類、両生類、魚類の一部で見られる。TSDの適応的意義についてはいくつか仮説があり、その中の一つが“雌雄の適応度に温度依存性があれば、TSDが適応的になる可能性がある”というものである。
そこで、その仮説を検証するために、本研究では以下のようなモデルを構築し、オスの生残率amを一定にし、メスの生残率af (T)=a1T+a0 (a1≧0)とおき高温で産まれたメスの生残率が高くなるように仮定した。その仮定の下で、自然選択によって収束する閾値温度がパラメーターによってどのように影響されるかについて解析した。ここで、閾値温度とは産まれた子供がオスになるあるいはメスになる境界の温度であり、集団中にはさまざまな閾値温度の個体がいると仮定した。
∂xm(t,v)/∂t= bam∫f(T)dT∫xm(t,k)xf(t,2v-k)dk/(Xm(t)+Xf(t))-Mmxm(t,v)
∂xf(t,v)/∂t= b∫af (T) f (T)dT∫xm(t,k)xf(t,2v-k)dk/(Xm(t)+Xf(t))-Mfxf(t,v)
Xm(t)=∫xm(t,v)dv, Xf(t) =∫xf(t,v)dv, f(T)=N(T0,σ)
式中で、xm(t,v), xf(t,v)は時刻tにおける閾値温度vを持つオス,メスの個体数密度、Xm(t), Xf(t)は時刻tにおけるオス,メスの全個体数、f(T)は生息域の温度分布(平均T0、標準偏差σの正規分布である)、bは1メスあたりの産卵数、Mm, Mfは単位時間当たりの死亡速度を表している。産まれる子供の閾値温度は両親の閾値温度の平均であるとした。