| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-314

込み合い環境下のオオミジンコにおける再生産およびストレス応答遺伝子の発現解析

*伴 修平, 市井涼子, 更井紀一(滋賀県大), 細井公富(福井県大), 田辺(細井)祥子(神戸大), 森司(日本大)

オオミジンコは込み合い環境下で成長を抑制し若齢で大型の仔虫を産出するが、高齢での生残率は低下することが知られている。また、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法によって、込み合い環境下では産卵に関する遺伝子発現が促進される一方で、ストレス応答遺伝子の発現は抑制されることが明らかとなった。そこで本研究では、込み合い飼育下でのこれら遺伝子の発現量をReal-time RT-PCRにより定量した。オオミジンコは50mlの培養フラスコに生後12時間以内の仔虫1個体(対照区)と20個体(込み合い区)を入れ、クラミドモナスを餌として、フロースルー装置を用いて餌不足と代謝産物の蓄積が生じないようにして飼育した。実験には第3クラッチから生まれた仔虫を用い、それぞれ3連で行った。この実験を繰り返し、4令から7令までの標本試料を採取した。これら試料より抽出したmRNAからcDNAを合成し、Real-time RT-PCRにて、ビテロジェニン(VTG)遺伝子、ユビキチン(Ubiquitin)遺伝子、およびヒートショック蛋白質(HSP70およびHSP40)遺伝子の発現量を定量した。その結果VTG遺伝子の発現は5令と6令で込み合い区の方が有意に高かった。一方、Ubiquitin遺伝子の発現は6令と7令で込み合い区の方が有意に低下した。HSP40とHSP70遺伝子の発現量は共に込み合い区で若干低い傾向にあった。これらはすでに知られている生理学的研究の結果とサブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法の結果を良く支持するものであった。オオミジンコは、込み合いに応答してVTG遺伝子の発現を促進して大型の卵を産むが、同時にUbiquitin遺伝子やHSP遺伝子の発現が抑制されることによって高齢での生残率の低下を招いているようである。


日本生態学会