| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-315

オーストラリア大陸中央部のオアシスに局所分布するヤシ科植物Livistona mariaeの起源

*近藤俊明(広大・国際), 兼子伸吾(京大・農), Crisp D(オーストラリア大), Bowman D.M.J.S(タスマニア大), Cook L.G(クイーンズランド大), 井鷺裕司(京大・農)

Livistona mariaeはオーストラリア大陸中央部のオアシスに局所分布するヤシ科植物で、大陸北部のNicholson川およびRoper川の2つの河川に分断分布する近縁種L. rigidaとは約800~1000km離れて生育する。そのため、L. mariaeは大陸の乾燥により祖先集団が大陸北部に後退した結果生じた遺存種であると考えられてきたが、核および葉緑体塩基配列解析では約4000bpに渡り2種間で変異がないことも報告されており、L. mariaeの起源は今も解明されていない。

本研究では、L. mariaeおよびL. rigidaを含むLivistona属5種22集団を対象とし、マイクロサテライト遺伝子座9座を用いた集団遺伝学的解析から、L. mariaeの起源と分布域形成過程の解明を試みた。

集団の系統解析およびSTRUCTUREを用いた遺伝構造解析の結果、L. mariaeおよびL. rigidaは種の違いを反映しない2つの遺伝的グループからなる単系統群を形成し、L. mariaeは約1000km離れたRoper川のL. rigida集団と近い系統関係を示した。すなわち、L. mariaeおよびL. rigidaは単一種であると考えられた。さらに、Isolation with migration modelを用いた分岐年代推定の結果、L. rigidaの分断分布が氷河期に大陸北部のカーペンタリア湾に存在した古水系に沿った分布拡大と海面上昇に伴う古水系の消失により形成されたこと、その後、Roper川のL. rigida集団からの偶発的な移住によって大陸中央部にのみ局所的にL. mariae集団が形成されたことが明らかとなった。


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