| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-318

分子からみた河川性魚類の分布域形成とデモグラフィ

*横山良太(北大・FSC),西城学,白川北斗,浦西茉耶(北大・院水),後藤晃(北大・FSC)

北日本の冷水性淡水魚類の分布域形成過程を考えるために,北海道において分布が重複する河川性魚類2種フクドジョウおよびハナカジカを対象に,分子マーカーによる系統地理解析を行い,それぞれの種の分布域形成史を推定するとともに,両種の生息地予測モデルを構築して現在の分布を規定している要因を推定した.系統地理解析から,フクドジョウでは6つ,ハナカジカでは3つの地域グループが見出された.それら地域グループ間の分化は,フクドジョウでは最大で約40万年であるのに対し,ハナカジカでは最大で約120万年であった.両種とも,各地域グループにおいて個体群サイズの急速な拡大は検出されなかった.各地域グループ内の個体群間の遺伝子流動量は一部を除き基本的に低い水準であり,各地域グループ内部は遺伝的構造を有していた.両種に見られたグループ内における個体群構造の存在が,地域グループ全体の個体群サイズの維持に関係していると推察された.このような分布域形成史と個体群構造は河川で一生を過ごす両種の生態を反映するものと考えられた.次に,現在の分布を規定している要因を推定するために両種の分布データと様々な環境・気候レイヤーを用いて生息地予測モデルを構築した.フクドジョウの分布に強い影響を与えているのは気候と地形要素であったのに対して,ハナカジカでは主に気候要素であると推定され,景観の特徴や気候的要因の影響は種間で異なっていると考えられた.今後,構築された生息地予測モデルを用いて,個体群間の遺伝子流動量や個体群内の遺伝的多様性に対して景観の特徴が与える影響を種ごとに推定し,両種の分布域形成と個体群構造に対する歴史的要因と現在の景観が与える影響をそれぞれ明らかにする予定である.


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