| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S11-6

ラジコンヘリ Falcon-PARSによる絶滅危惧種生育位置の特定

小熊宏之(国立環境研究所)・渡部靖之(情報科学テクノシステム)

Falcon-PARS((株)情報科学テクノシステム社製)は、デジタルカメラ搭載ラジコンヘリと、空撮画像を処理する専用ソフトウェアから構成される新たな航空写真測量システムである。ラジコンヘリは小型(85cm×80cm×15cm)・軽量(2kg)で可搬性に優れるほか、指定した撮影箇所への移動と撮影を自動で実行でき、垂直離着陸方式のため滑走路を必要とせず、機動性・柔軟性に富んだ効率的な運用ができる。ソフトウェアは複数枚の写真と撮影位置のGPSデータのみを用いて、複数枚の写真を自動接合し、全画素に緯度・経度・高さ情報が付加された画像を生成する。これらの特徴により、直接踏査が困難、あるいは調査による攪乱が懸念される対象への高解像度撮影(1画素が数mm~1cmオーダー)を可能とする。更にこれまでのラジコンヘリ等による空撮と異なる特徴として、撮影画像と撮影位置のGPSデータのみから、撮影画像の全画素に地理座標が付与されることが挙げられ(地上測量は不要)、撮影対象の分布位置を把握できるほか、同一対象の反復調査を可能としている。

このシステムを用い、阿蘇山において絶滅危惧種であるオグラセンノウの開花期に撮影飛行実験を行った。対地高度を30mとした場合、撮影画像は1cm程度の解像度となり、オグラセンノウの花を特定するには十分な解像度が得られると期待された。その結果、これまでに人が踏み入ることができなかった領域においても、開花しているオグラセンノウが確認され、個体毎に生息位置を取得することができた。今後、定期的に撮影を行い、また、近赤外線カメラ等の他センサーを組み合わせることで、オグラセンノウの個体数の増減や、周囲の環境変化との関係などの調査を行うことが可能と考えられる。


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