| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T01-1

渡島半島地域におけるヒグマ捕獲数の長期データから見た行動の変化

間野 勉(道総研環境研セ)

一般に、狩猟鳥獣の捕獲数の変動には、捕獲対象となる鳥獣の生息数のほか、捕獲効率に影響する狩猟制度や狩猟者数、さらには鳥獣の行動に影響する食物条件などの環境要因の変動も大きく影響すると考えられる。北海道渡島半島地域には、半島基部の黒松内定地帯を北の境界としてほぼ隔離されたヒグマ(Ursus arctos)個体群が存在する。この地域におけるヒグマの捕獲数は1990年代の年間平均捕獲数65頭から2000年代には105頭と63%増加し、1990年から2009年までの20年間に平均年5%の増加傾向を示した。次に、ヒグマの利用する食物資源を考慮した春(1~4月)、初夏(5~7月)、晩夏・初秋(8,9月)、秋(10~12月)の季節区分で捕獲数の動向が異なることが判明した。初夏および晩夏・初秋では有意な増加傾向が見られたのに対し、春と秋の捕獲数には顕著な増減傾向は見られなかった。生息数の増加が捕獲数の増加の要因であるとすれば、季節にかかわらず同様の動向を示すと考えられるにもかかわらず、以上のような特徴が見られた要因として、ヒグマの行動様式の変化が考えられた。初夏、晩夏・初秋の捕獲のほとんどが、ヒグマの生息域と農地や市街地との境界付近において実施されていることから、この時期の捕獲数の増加は人間の生活域周辺におけるヒグマの活動頻度の増加を反映していると考えられる。また、ヒグマによる農作物被害が一年で最も顕著な晩夏・初秋の捕獲数は、農業被害防止のために駆除された個体数を反映していることから、農作物の食害を学習した個体の急増が示唆される。


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