| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T07-3

南極の湖底藻類マットにおける鉛直分布パターンモデル

*水野晃子,佐々木顕(総研大・学融合)

南極の湖沼群では、湖底に繁茂する藻類がマットを形成することが知られている。この湖底藻類群集のマットは色素層を形成し、上から順に黄色、黄緑、緑、深緑となる。この色素パターンは、表面にカロテノイド類などを多く含むことで、強光による光合成の阻害を防ぐことが考えられている。また、藻類マットの群集組成は、深度によって異なっている。さらに、この藻類マットの厚さや堅さ、色素層の厚さ、表面の形状などが、湖沼によって大きく異なっており、どのような要因でこのバリエーションが形成するのかは分かっていない。

そこで、我々はカロテノイド含有量が異なる複数種の藻類の競争モデルを作成し、この色素層構造の形成メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。我々は、藻類の細胞内に置けるカロテノイド類の役割が、光の捕集と強光阻害の防御の二つに分類出来ることを考慮し、捕集に使われるカロテノイドと防御に使われるカロテノイドがどの程度含まれるかによって、藻類の光合成効率が決定されると仮定した。湖底まで届く光強度をもとに、どのような吸収波長特性のカロテノイドを多くもつ藻類が優占するのかを調べた。

この藻類の湖底バイオマットが色素層を形成する現象は、南極以外では知られていない珍しい現象である。強光阻害とカロテノイド類による防御のメカニズムが藻類群集の組成を変化させ、結果として色素層の形成要因であることが説明出来れば、藻類群集構造のパターンが光のみによって形成されることを明らかにした初めての事例となると期待している。


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