| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T14-5

利根川下流域の水田地帯におけるシギ・チドリ類の春季の分布パターンと景観の履歴

西川雄太(東大・生物多様性)・木本祥太(東大・生態環境調査)・天野達也・D.S.スプレイグ(農環研)・加藤和弘(東大・生態環境調査)・藤田剛・樋口広芳(東大・生物多様性)

日本で見られる淡水性シギ・チドリ類は水田を渡りの中継地として主に利用するが、近年個体数の減少が著しい。水田地帯では、新田開発、乾田化、周辺景観の変化など、様々な時空間スケールで環境改変が起こっており、シギ・チドリ類の生息地利用への影響の解明が求められている。

水田地帯でのシギ・チドリ類の空間分布は、各種が最適な生息地を選択した結果と考えられる。しかし、渡り途中の短い滞在期間に最適な生息地を探すのは困難とも考えられ、実際の生息地は過去の経験などから決められている可能性もある。その場合、後背湿地など過去の生息地の分布が現在の生息地の質に関わらずシギ・チドリ類の空間分布に影響を与えている可能性がある。一方で、過去の土地利用が現在の生息地の質に直接影響を与えている可能性もある。そこで本研究では利根川下流域の水田地帯を対象に、現在の水田管理様式と景観要素に加え、過去の生息地分布がシギ・チドリ類の空間分布に及ぼす影響の解明を目的とした。

調査では、利根川下流域の水田地帯に1kmのラインセンサスルートを多様な環境を網羅する形で28ヶ所設け、2010年5月3日~25日の期間に全ルート5回ずつシギ・チドリ類のセンサスを行った。

現在の環境要因として、調査区域における水田の水深、農地の水田率を現地調査から、周辺1~5㎞内の水田、開放水面、市街地の面積を『100m細分メッシュデータ』から数値化した。また、過去の環境要因として、1880年~1886年に作成された『迅速測図』から周辺1km内の湿地面積を集計した。解析では、各ルートにおけるシギ・チドリ類の種別個体数を目的変数、過去及び現在の環境要因を説明変数とする多変量解析を行った。発表では解析結果から過去の土地利用の影響を中心に考察する予定である。


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