| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T19-3

系統を考慮した生態ニッチモデリングによる群集保全

村上正志(千葉大・理)

人為的な環境改変による生物種の絶滅が進行する中で、群集・生物多様性の保全は、生態学が解決すべき大きな課題である。特定の種を保全するには、その種が必要とする局所的な環境を保全すればよいが、将来にわたって生物多様性を維持するには、広域での群集レベルの保全が必要になる。しかし、それぞれの種の環境に対する反応は多様であり、環境改変が群集構造に与える影響を理解するには、これらの反応を制限する要因に注目する必要がある。生物種の分布予測は、生態ニッチモデリングとして定式化されているが、これは、環境変数と生物種の分布の相関関係から、分布域全体を外挿するというアプローチである。しかし、生物種の形質は系統関係に依存するため、分類群内の種は疑似反復となる可能性がある。そこで本研究では、生態ニッチモデルに、分類群の集合をランダム効果として階層的に導入する。分類群の階層性を異なる段階で導入した複数のモデルを比較することで環境改変に対する反応性に関する系統の影響を評価する。これに基づいて、人為的な土地利用の改変が生物群集に及ぼす影響を議論する。


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