| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-02 (Oral presentation)

木本植物の葉面積指数のグローバルメタ解析II 植生タイプによる環境応答特性の違いについて

*飯尾淳弘(国環研),中河嘉明(筑波大),Anten Niels(ユトレヒト大),彦坂幸毅(東北大),伊藤昭彦(国環研)

はじめに; 葉面積指数(LAI)は植物群落の光吸収量や物質生産量を規定する因子であり、全球レベルでその植物機能型(PFT)による違いや気象要因との関係を調べることは、生産量の気象変動影響予測や生態系モデルの検証に役立つ。前回大会ではデータベースの概要を説明した。今回はPFT、気象の影響に関する分析結果について発表する。

方法; 約500本の論文から2922のLAIデータを抽出した。LAIの定義を「half of total surface area」で統一し、地上観測以外のデータ、伐採や施肥など人為的影響の大きなサイトのデータは除外した。PFT(常緑針葉樹;EC、落葉広葉樹;DB、常緑広葉樹;EBなど)や緯度経度、測定手法も入力した。気象データベース(CRU1.0)を利用して、各サイトの年平均気温(MAT)とAridity index(ARID、年間降水量/可能蒸発散量)を決定した。LAIとARIDは正規分布に近づけるためにlog変換した。

結果と考察; 全データでは、MATとLAIの関係は10℃と20℃にそれぞれ最大、最小のピークのある曲線を示した。ARIDとLAIの関係もlog ARID = 0に変曲点のある飽和型の曲線を示した。これらをPFT別に分析すると、低温条件(MAT < 10℃)でDBとECに有意差が検出された。なかでも、湿潤条件(log ARID > 0)でのARIDに対する反応に大きな違いがあり、DBのLAIは一定だがECは増加することがわかった。ECはDBと比べて貧栄養条件に強いので、激しい降水(高いARID)で養分溶脱やリタ-分解速度の低下が起こってもLAIを増加できるのかもしれない。冷涼な高緯度地域では降水量が増加すると予想されている。将来的にECのLAIは増加し、植生の分布を変化させるかもしれない。


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