| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-10 (Oral presentation)

富士山火山荒原における実生定着に対するシモフリゴケの環境改善機能

*南 佳典,木村沙智(玉川大・農),荻野恭子(千葉大院・園),勝又暢之(平岡研),沖津進(千葉大院・園)

富士山北西斜面では,しばしば雪崩による大規模撹乱が発生し植生に大きな被害が出る.雪崩の流路は谷地形をより深いものとするため尾根地形に植生が半島状に残されるが,森林限界線の上昇は表土の不安定性などの物理的環境要因,栄養塩の制限などによって極めて遅い.遷移段階初期に出現する樹木実生が厳しい環境である火山荒原に侵入し定着するには,より初期に侵入できる植物による定着促進効果(Facilitation)が重要な要因となる.そこで,本研究では遷移段階初期に侵入し定着できるシモフリゴケによる樹木実生の定着促進効果を明かにし,火山荒原における樹木実生の動態を検討することで,遷移段階初期の遷移メカニズムを解明することを目的とする.すでに,火山荒原に分布するシモフリゴケによる実生定着促進効果の可能性について発表したが,より詳細な調査を行い地形要素や地温変化などの影響とあわせて検討した.

樹木実生は,基本的にシモフリゴケパッチ内の方が裸地に比べ多く出現した.また,生育する実生サイズでもパッチ内の方が顕著に大きかった.風衝側と風背側を分けて検討した場合では,いくつかの例外を除き個体数に大きな差は見られなかった.しかし,サイズでは風衝側でダケカンバが有意に大きく,カラマツやミネヤナギにも同様な傾向がみられた.パッチサイズの増加にともなう個体数の増加は風衝側のパッチ内で顕著であったが,裸地では相関が見られなかった.地温の変化では,風衝および風背ともに夏季における日較差がパッチ内の方が裸地に比べ小さく,凹地よりも平地の方でその傾向は大きかった.

シモフリゴケによる定着促進効果は,風衝側と風背側の両方で確認され,とくに風衝側でその効果が高いことが確認できた.シモフリゴケパッチが形成されていることによる夏季の地温上昇やそれに伴う乾燥の緩和が大きな要因であると考えられる.


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