| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-11 (Oral presentation)

カンボジア・トンレサップ湖氾濫原の野焼き跡地への侵略的外来低木Mimosa pigraの侵入

*荒木祐二(埼玉大),平吹喜彦(東北学院大),ドゥング ポゥキィ(PIT),塚脇真二(金沢大),富田瑞樹(東京情報大),鈴木邦雄(横浜国大)

東南アジア最大の淡水湖であるトンレサップ湖の氾濫原には,高木のBarringtonia acutangula(サガリバナ科)が優占する季節浸水林が成立している。しかし,野焼き跡地などの強い人為圧がかかる場所では,侵略的外来低木のMimosa pigra(マメ科)が高密度の藪を形成し,ユニークな生態系と地域住民の生業に深刻な被害を与えている。本研究では,野焼き跡地にみられたM. pigraの発芽から定着,優占までの侵入初期過程を,B. acutangulaとの競合に注目しながら1年10か月間追跡した。

調査はトンレサップ湖北縁部の氾濫原で,B. acutangulaが優勢な藪の焼け跡地(約0.7ha)において,2005年5月~2007年3月の期間に4回実施した。毎回50個の方形区(1m2)を無作為に設置し,植生調査の実施とともに,全天空写真から相対光量子束密度を算出した。

野焼き跡地の植生回復過程は以下のように示された: ①野焼き1週後の裸地に,まず先駆的つる性草本のMerremia hederacea(ウリ科)が高頻度で侵入し,②1.9か月後には,M. hederaceaが優勢となる一方,M. pigraは,種子由来の実生が散在する程度だった。③冠水期間を経た14.5か月後には,主に萌芽から発生したM. pigraが急激に成長し,高さ2.1m,被度64.2%にもなって優占する状態となった。④2度目の冠水期間を経た21.9か月後には,M. pigraの優占状態はさらに顕著となり,高さ2.9m,被度90.2%に達して他種を完全に被圧するようになった。以上から,伐採・野焼きによる著しい人為的攪乱を受けた氾濫原の立地では,M. pigraの萌芽による更新能力が勝り,本来の優占種であるB. acutangulaの定着が阻害されていることが示された。


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