| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) A2-16 (Oral presentation)

ダケカンバ二次林に対する強度の異なる攪乱の効果

*滝谷美香(道総研林業試),大野泰之(道総研林業試),八坂通泰(道総研林業試),梅木清(千葉大)

北海道に広く成林する落葉広葉樹二次林において,有用材として利用可能な樹種の成育を促進することは,天然林資源の充実を図る上で重要である。本研究ではダケカンバを主体とする落葉広葉樹二次林に対して,強度の異なる伐採を行い,個体成長に対する効果について検討した。

調査地は,北海道三笠市に位置する落葉広葉樹二次林で,ダケカンバが優占する。この林分に50m×50mの調査区を4つ設定し,そのうち一つを無処理とした。他の3区の無処理区に対する残存木の胸高断面積合計(BA:m2/ha)は78.2%,55%および46%とした。伐採処理は1998年に行い,調査区内の立木の胸高直径(cm)を,1994,1998,2005,および2009年に測定した。伐採後の個体の年平均直径成長量(cm/year/n)に対する,樹種(ダケカンバ, ハウチワカエデ, ホオノキ, イタヤカエデ, およびその他の5種),期首胸高直径,期首BAおよび伐採後経過年数による影響を検討するため,一般化線形混合モデルにより統計解析を行った。

統計解析の結果,個体の直径成長量に対して,期首個体直径は正の効果を,期首BAは負の効果を与えていた。より大個体の成長量が高くなっていること,および競争による個体成長量への効果が認められた。また,経年により成長量は減少する傾向にあった。さらに樹種による個体成長量の違いが認められた。解析に用いた樹種の中では,イタヤカエデの個体成長量が最も高く,ダケカンバは最も低い傾向にあった。

落葉広葉樹二次林において,伐採などの攪乱により競争効果が緩和され,個体の成長量が改善されることが示された。本研究では,林業において有用材とされるダケカンバの成長促進を目的としたが,他の優占樹種に比較すると,その効果は低かった。伐採処理を行った時点の個体サイズなどの影響があると考えられる。


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