| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-12 (Oral presentation)

ロシア極東ハバロフスク周辺の森林植生の構造

*沖津 進(千葉大・園芸),パベル・クレストフ(生物土壌研究所, RAS),中村幸人(東農大・地域環境科学)

ロシア極東ハバロフスク周辺は東亜温帯(汎針広混交林帯)と亜寒帯針葉樹林帯の移行域に位置し,森林植生も両者のものが比較的狭い範囲の中に共存分布している.2011年夏,短い期間ではあったがこの付近の森林植生を調査する機会を得た.ここでは主に森林構造に着目しながら森林の特徴を概観する.東亜温帯域の森林としてはモンゴリナラ優占林が主であった.シナノキ類,エゾイタヤ,ヤエガワカンバが主な混生樹種で,それぞれ林内で更新していることが伺われ,安定林となっていた.針広混交林要素であるチョウセンゴヨウは分布量が少なかった.亜寒帯針葉樹林帯の森林としてはトウシラベ優占林が主であった.エゾマツ,ダケカンバが混生していたが,エゾマツが優占するケースが少なかった.この場合もチョウセンゴヨウの混生量は少なかった.大陸部の針広混交林帯ではチョウセンゴヨウがエゾマツ,落葉広葉樹いずれとも混生して森林の主体となることが多いが,ハバロフスク周辺ではそのような例は今回の調査範囲では見られなかった.東亜温帯と亜寒帯針葉樹林帯の移行域に位置しているものの,森林の構造からは両者のタイプが同じ立地で交互に入れ替わる循環変化は見られなかった.また,チョウセンゴヨウの分布量も全体として少なかった.これは,移行域にあるものの,モンゴリナラ,シナノキ類,エゾイタヤの分布北限からやや南にあるために,これらの落葉広葉樹が比較的旺盛に生育し,同所的に現れるチョウセンゴヨウの分布を制限しているためと思われる.このため,東亜温帯と亜寒帯針葉樹林帯の森林タイプは比較的明瞭に分かれていると考えられる.


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