| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-17 (Oral presentation)

小笠原諸島北硫黄島における標高ごとの1年間の温湿度変化と植生パターン

*朱宮丈晴(日本自然保護協会),千葉勇人(小笠原自然文化研究所),鈴木創(小笠原自然文化研究所),加藤英寿(首都大・理工)

2008年6月(東京都委託、NPO法人小笠原自然文化研究所)と2009年6月(首都大学東京)に小笠原諸島火山列島の北硫黄島において標高別に動物や植物に関する生態学的調査を実施した。その際に北硫黄島における標高傾度に沿った植生の組成的,構造的変化を調査した。標高別に25~200m2の調査プロットを5ヶ所設置し、木本層(胸高1.3m以上),草本層(胸高1.3m未満)、着生層に着目して群落生態学的な調査を行った。同時に気温、湿度、土壌水分の変化を調査した。温湿度データに関しては2009年6月に調査した際に1年間計測したデータを回収した。その結果、逓減率は0.73℃/100mで平均気温は25.5から19.8℃に低下し、平均湿度は454m以上で90%を越えた。標高0~200mではモモタマナが優占し、テリハボク、タコノキなどからなる海岸林がみられ,崖錐により下層の発達は悪かったが、200~500mではチギ、オガサワラビロウ、ウラジロエノキなどの常緑高木種と木生シダのマルハチが林冠で共存し、下層にオオバシロテツ、ヒサカキという2層構造をもつ多種優占型の林分がみられた。500m以上では常緑低木種のヒサカキが主な優占種となっていたことから、亜熱帯から暖温帯にいたる植生の変容パターンが北硫黄島のような大洋島においても確認された。


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