| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-13 (Oral presentation)

間伐にともなうヒノキ個体群の成長反応と林分構造の推移について

*多胡潤哉(龍谷大・理工), 石井将貴,埃沢亮太(京大・農),宮浦富保(龍谷大・理工)

管理放棄された里山のヒノキ林において密度管理を行い、その効果を検証する。80年生のヒノキ人工林で肥大成長量、土壌呼吸量、枯死物量を測定し、生態系純生産量の評価を行った。2010年3月に、不良形質木、小径木を優先的に間伐し、本数密度を1175本/haから613本/haに減少させた。対照区として、本数密度1033本/haの隣接するヒノキ林を設定し、これと比較することで間伐区のヒノキ個体群の密度管理効果を検証した。2006年から2008年に行われた同じヒノキ人工林での炭素固定能力の推定結果と比較することにより、間伐後の炭素固定能力を評価した。

バンドデンドロメータによるヒノキ個体の肥大成長の測定によって、間伐区のヒノキ個体群の相対成長速度は改善傾向がみられた。ヒノキの幹は5月から7月にかけて最もよく成長することがわかった。特に胸高直径25~35㎝のヒノキ個体の成長量が大きく、2011年はさらに生産量の増加が見込まれる。リターフォールを採集し、枯死量を測定した結果、間伐前の2006年から2008年と比べて減少傾向がみられた。また、間伐区と対照区の土壌呼吸量には、有意な差はなかったが、2010年は2006年から2008年の値を上回り、11月は間伐区の土壌呼吸量が対照区の値を下回る結果となった。2010年の対照区内のヒノキ細根の伸長量が秋で最大であった。2011年も同じく11月の間伐区の土壌呼吸量が対照区の値を下回った。間伐区の方が対照区よりも細根バイオマスが小さいと推定される。このことが土壌呼吸量の差に反映しているのかもしれない。


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